[コラム] ゴルフのパター練習器具 分解調査及び改造
背景
ゴルフにおいてパターは重要な要素です。
ドライバーで250ヤード飛ばすのも、パターで30cm打つのも同じ1打です。そしてピンに近づくほど1打のミスの許容範囲は狭まり、正確性が重要となっていきます。メカ設計の寸法公差と似た考え方ですね。
1ラウンド18ホールを全てパーで回ったときのスコアが72、 全てボギーの場合は90、ダブルボギーなら108です。 その内、全ホールでパターを2パットで沈めたとしても36打ですので ゴルフが上手になればなるほど、パターの出来がスコアに直結します。
「全て1パットで沈めることは難しいのか?」という疑問については 約1.5mの距離がパターの入れ頃、外し頃と言われており、ゴルフが上手な人でも100%入れるのは難しいです、それ以上の距離なら尚更です。 常にピンから1.5m圏内にアプローチできればいいですが、それも難しいので、だいたい1パット目で1m圏内に寄せて、2パット目でカップインさせるのがセオリーです。
ちなみに1980年代生まれは高確率でグリーンの傾斜を読む度に「シャイニングロードが見えた!!(゚Д゚)」と言いながらパッティングする傾向にあります。 ライジングインパクト世代ですね、最近はゴルフ漫画が少ないので残念です。
そんなわけで、重要なパターを練習するために様々な器具があります。 その中で最もポピュラーなのがパターマットです。
多くのパターマットはカップ部が高くなっており、入れた球が斜面から帰ってくる仕組みになっています。
位置エネルギーを運動エネルギーに変換しているわけですね。 この仕組みの問題点として
- カップ部が高くなっているため、通常の距離より強めに打つ必要がある(本番でパターマットと同じ距離感で打つと、大オーバーしてしまう)
- 帰ってくる球の経路にはマットが無いので、転がり音がうるさい
という課題があります。
その解決策として、下記のようなパターマットが販売されています。
こちらはボールが自動で戻ってくるため、高低差が少なく、距離感が実際のグリーンに近い。 また、マットの上でボールが戻ってくるので音も静かです。 従来の位置エネルギー⇒運動エネルギーを、電気エネルギー⇒運動エネルギーとしているわけですね。
その分、価格も通常のパターマット(1500円程度)に比べて6500円と高価です。
しかし、このパターマットにも問題があります。
- 電池式だが、ON/OFFスイッチがないため、電池を入れたままだと数日で電池が切れてしまう
- 毎回背面の電池を入れ替えするのが面倒
そこで、このパターマットを分解し、スイッチ式の電池ボックスに変更してみました。(ようやく本題)
分解調査及び改造
駆動部を本体カバーから取り外して分解。
構成
メカ部品
- ボール接触レバー
- 衝撃吸収用スポンジ
- 本体ケース
- 電池ボックス
ハード部品
- リミットスイッチ
- ソレノイド
- 基板
- 電源6V(乾電池1.5Vx4)
のシンプルな構成ですね。 ボールが来たときに、リミットスイッチがONになり ソレノイドに通電させて、ボールを弾き返す仕組み。
設計者目線としては、コストがメカ部品(外装やマット部合わせて)1000円弱、ハード部品は1000円強、合計2000円くらいはしそうです。 それを6500円で売ってるわけですから、結構良心的です。 そりゃスイッチつけてる余裕はないかも。
今回、この電池ボックスをスイッチ付きの電池ボックスに変えるだけなのでハード的にも問題なさそうです。もし壊れてもArduinoとかで簡単に作れる。 実際換装したのが下記。
動画
スイッチ付き電池ボックスに付け替え
パター自動返球
注意書きには、電池は1.5Vのもの(アルカリ乾電池等)を使用してくれとありましたが、1.2Vのエネループ(ニッケル水素電池)でも動作してくれました。 余ってたスマホ用バッテリーでも使用してみたかったので、USBケーブルを改造し、5VとGNDだけむき出して本体に繋げてみました。 無事に動作確認、5V、1Aの5W程度の電力で動作してくれそうです。
パッティングについて
パター練習用のボール(別売)にはラインが入っており、回転が目視でわかりやすいようになっています。 真っ直ぐ転がしたいので、進行方向の縦回転のみが理想ですが、打ち方が悪いと横回転が加わってしまい、直進性が悪くなります。 再現性を高めるために体の大きな筋肉を使って、肩を上下させるように打つのがコツです。 動画ではややひっかけ気味の回転がかかっているので、要修正ですね。
所感と今後の展望
結構簡単な仕組みで生活に役立つモノが作れそうなことを実感。 分解してみると「なんだ、結構単純な仕組みじゃないか」と思ってしまうが、シンプルな設計、単純な仕組みで機能させる、製品を成り立たせることが実際の製品開発では重要な要素であるため、優秀な設計と言える。 もし僕が「ボールが自動で帰ってくる機構を作れ」と言われれば、「ソレノイドを使うとボールが傷つくかもしれない。距離センサ、ゴムローラ、モータでソフトにボールが返ってくる機構を作ろう」と思ったやもしれない。その場合は売価1万円以上しそうなので、その金額に見合う製品価値が必要となってしまう。 その点、本製品は「ボールなんでドライバーでぶっ叩かれてるし、ソレノイドで雑に弾き出してもよくね?」という大胆発想で低コストを実現している。すばら。
今後の改造として、例えば、自動返球に加えて
ボールのラインをカメラで認識して、ボールの縦横回転数を算出(ボールの直進性を判定)
骨格抽出アルゴリズムでパッティングの動きを抽出(手先だけで打っていないか、肩を使って大きくストロークできているか判定)
などができると面白いかもしれない。少なくとも僕なら即買いする。
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