電動カム軸式抵抗制御器
電車の制御方式として古くから用いられてきた「電動カム軸式抵抗制御」でモータを制御する装置を作ってみました。
概要
古くから直流電車の制御方式として「抵抗制御」が用いられてきました。
電源とモータの間に配した抵抗器を順に短絡してモータへの印加電圧を制御する手法です。
その中でも、モータでカム軸を駆動して接触子を開閉するのが「電動カム軸式」で、鉄道車両用としては「界磁チョッパ制御」や「界磁添加励磁制御」に発展しながらパワーエレクトロニクスが発達する90年代初頭まで採用例がありました。
(さらに以前には空圧の「電空カム軸式」などもありました)
参考動画:新潟車両センター見学会2018 クモヤ143系 主制御器
仕様
実際の抵抗制御器の機能のうち、メインの機能である「抵抗制御」と「直並列組み合わせ制御」を実装しました。
「直並列組み合わせ制御」は「抵抗制御」を行ううえでの具体的な手法なので、「直並列組み合わせ制御」により「抵抗制御」を行うというのが的確ですね。
[実装]
- 抵抗制御:抵抗器を順に短絡して印加電圧を制御
- 直並列組み合わせ制御:モータの接続を直列から並列へ切り替え、抵抗器の熱損失を低減する
[未実装]
- ノッチ戻し:カム軸を逆転させ、低い段に下げる。→カムの圧力角が大きいので無理ということが組み立て後に発覚
- 弱め界磁制御:モータの界磁(電磁石)の磁界を弱め、逆起電力を減少させ回転数を上げる。→モータは永久磁石界磁のRS-385PHを使用するため実装不可
- 渡り:直列から並列へ切り替わる過渡的な段。→よくわからなかったので省略。ただし、そのせいで切り替わりが不安定になる可能性あり
- 発電制動:モータを発電機として作用させ、生じた電力を抵抗器で消費し回転抵抗を発生させる。→今後の課題
外観
部品は、カップリングやハブなどトルク伝達系を3Dプリンタで造形、それ以外は主にMDFのレーザー加工で製作しています。
本来、回路はスタイリッシュに筐体に収めるはずでしたが、配線が意外とかさばってしまったので箱で嵩上げしています。
ハードウェア構成
抵抗制御回路のほか、表示用LED点灯回路と位置決め補助用ロータリーエンコーダを付けます。
カム軸回転用モータ(パイロットモータ)は本来DCモータで、電流が設定値(限流値)に達すると限流継電器(リレー)がONになりカム軸が回転するのですが、今回はお手軽にステッピングモータを使用しています。
アナログ制御のものを作っておきながらここで半導体を使ってしまったのはちょっと悔しいのですが…。
各スイッチを下記のシーケンスで切り替えます。
これをもとに11種12枚のカムを設計しました。
手前にあるタービンのようなものはエンコーダのスリット板です。
残念ながら。
今回リミットスイッチはNO(常時閉)で接続しましたが、新性能車などの実機は万一の溶着時にカムで押し開けるようにNC(常時開)らしいです。
抵抗は 2.2Ω 1W のカーボン抵抗を使用します。
本当はセメント抵抗の方が容量が大きくて良いのかもしれませんが、数サイクル回してもほんのり温まる程度なので問題ないと思われます。
(むしろ、ステッピングモータの発熱のほうがはるかに大きい)
モータM1への印加電圧を測定するとグラフのようになりました。
S1で電圧がいきなり 4 V 以上あることと、P1で電圧が若干下がるのがちょっと気になります。
並列段ではM1とM2の抵抗が交互に短絡されるため、グラフが階段状になっています。
モータの軸同士が物理的に同期されていれば滑らかな加速になりそうですね。
ロータリーエンコーダ
カムの段数に合わせてロータリーエンコーダを自作しました。
スリットの通過をフォトリフレクタでカウントする一般的な仕組みで、位相を1/4周期ずらしたスリット板を2枚使用して2相にしています。
カム軸の回転はステップ数決め打ち+エンコーダのカウント数で補正します。
しかし、アナログ値のパターンに個体差が大きい関係で判定がうまくいかず、2相あるくせに回転方向が判別できません。
白く塗りましたが効果なし。
(はっきりデジタル値の出るフォトインタラプタの方が良かったかも…。)
ステップ数の決め打ちをするにしても、ステッピングモータの巻線温度によって特性がだいぶ変わるのでなかなか調整が難しいです。
状態表示用LED
どのスイッチがONになっているか表示するために、それに応じた場所のLEDが光ります。
こちらはカムではなくマイコンからトランジスタアレイを介してPWM+ダイナミック点灯制御しています。
12個のLEDを4つずつ3つのユニットに分けており、4セグLED(?)を3つカソードコモン接続しているようなイメージです。
前述のようにカムの位置決め精度が悪く、実際の状態とずれが生じるので素直にカムでON-OFFさせた方がよかったかもしれません。
LEDは電球色のものを使用し、5次関数(5次両停留曲線)でデューティ比を変化させることで電球のようにぽわ~っと光らせています。
下図が上記全て回路を含む基板です。
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